手足口病

正式には溶血性連鎖球菌と呼ばれる細菌で、α溶血とβ溶血を呈する2種類があり、後者でヒトに病原性を有するものは、A群、B群、C群、G群などです。

 

溶連菌感染症の90%以上がA群によるものです。したがって、一般にはA群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)による感染症を溶連菌感染症として理解されているといってもよいでしょう。
主に“のど”に感染して、咽頭炎扁桃炎、それに小さく紅い発疹を伴う猩紅熱といった病気を引き起こします。

溶連菌が原因で大きな病気との合併症になるケースがあります。
下記の病気のリスクがあります。

粘膜、咽頭炎、扁桃炎、猩紅熱、中耳炎、副鼻腔炎、皮膚・軟部組織、伝染性膿痂疹、蜂窩織炎、丹毒、肺炎、菌血症、トキシックショック症候群

 

原因 (感染経路)

 

腸の中の腸管ウイルスであるコクサッキーA16ウイルスやその変異型、エンテロウイルス71の感染です。他にコクサッキーA6、9、10なども原因となることがあります。

これらウイルスは発症までに潜伏期間を3~5日程要し、発症すると手足やお尻などに水疱性の発疹が出来て、時に発熱も伴う症状を引き起こします。

感染経路

咳やくしゃみなどによる飛沫感染が主となりますが、ウイルスを直接触って起こる接触感染や、便の中に排泄された原因ウイルスが口に入って感染する糞口感染などでも感染します。

特に5歳までの幼児期に起こりやすく、その時期に入所している保育園や幼稚園などの施設内において集団感染することが多くなります。

また6~9月の夏時期に感染が広がることも特徴的な病気です。

 

症状

 

潜伏期は3~6日で、1/3程度に38℃の発熱を1~2日間おこります。

特徴とされる発疹は手のひら、足の裏によくでき、乳児では足からお尻にかけてできることも多いです。

典型的な発疹は中心に水疱をもち、水疱の周囲が赤い発疹で、大きさは米粒程度で痛みは無いとされています。

発疹自体は数日中にあめ色になって自然に消えていきます。

問題になるのは口内炎で、口の中のどこにできてもかまいませんが、2~3mm程度のアフタ性口内炎となり、これがとっても痛くてご飯を食べてくれないのが一番困ります

 

治療法

 

特異的に有効な薬はなく、発熱や痛みに対する治療を行います。
特別な治療法が存在するわけでもなく、自然経過が基本となる病気です。

注意が必要なのは、手足口病の症状から栄養失調や脱水症状を起こしてしまわないようにすることです。

水分と塩分の補給、十分な栄養補給を心掛けることが必要です。

嘔吐や下痢を伴う用であれば、点滴なども必要となる場合もあるでしょう。

 

手足口病の予防方法

 

・手洗いエンテロウイルスとコクサッキーウイルスなどは、熱やアルコール消毒薬に対しては力が弱まる傾向がないため、せっけんによる手洗いが一番効果的となります。

・うがいやマスク手足口病のウイルスが異なっても感染経路が同じです。接触感染のほか感染者のくしゃみや咳による飛沫感染も経路のひとつです。 外出時のマスクと外出から帰って来た時のうがいが重要です。

・排泄物を正しく処理 感染者の便には2~4週間程度、ウイルスが存在しています。便を処理する際には手袋を使用する、処理後には手洗いをする、また汚物はビニール袋に入れてしっかり口を縛って処理してください。

知らずにウイルスが付着した手で壁やドアノブなどに触れると、次々にウイルスは広がっていきます。感染者と接したあとは細心の注意を払って、手を媒介とした感染の拡大を防ぎましょう。

 

手足口病の種類

 

手足口病は手や足、口腔内の粘膜にできる水泡状の発疹が特徴で、それに伴って発熱する人もいます。

感染してから症状が出るまでは3~5日程度で発疹も自然に治癒することが多いのですが、脳炎などに合併する危険もある病気のひとつです。手足口病はウイルス感染でありそのウイルスの種類が分かれます。

・コックサッキーウイルスA4、A5、A6、A8、A9、A10、A16手足口病を引き起こす代表的なウイルスです。 特徴的なのは潜伏期間が4~6日と比較的短い。

またコックサッキーウイルスA6の場合には他のウイルスに比べて発疹が若干大き目であり、発疹が消失した後に爪を作り出す機能をストップさせる作用によって爪甲脱落症をおこすことがあります。

・エンテロウイルス71 手足口病から合併症を起こすことが多く、重症化しやすいウイルスです。エンテロウイルスが血管内へ進入することで、脳にある髄膜に到達し脳炎や髄膜炎などを引き起こすこともあります。

・エコーウイルス2、3日の発熱があり、いったん解熱しても再度発熱が見られたり、風疹と間違えそうな湿疹が出現します。

 

手足口病の注意点

 

当院では新宿や新宿近郊にお住いの患者さんが多く、手足口病ではお子さんに多く見られます。しかし確率的には少ないのですが、お子さんから大人にもかかる病気であるということを意識しなければなりません。

大人の方で口腔に水泡性の発疹が見られた場合はすぐに耳鼻科、耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。

子供が多く集まった場所ばかりが感染するリスクとはなりません。感染経路は直接ウイルスに触れた、くしゃみによって痰や唾などが付着したなどがありますが、感染者の排泄物によってトイレなどでも感染することがありますので、公共のトイレなどでも感染リスクがあるということになります。

 

手足口病の治療薬

 

ある程度のウイルスの特定はされていますが、手足口病に対するワクチンや治療薬はありませんので、現れている症状によって生じる苦痛の緩和(対処療法)を行っていきます。

口腔内のひどい発疹にはステロイドが少量入った塗り薬、手足の湿疹が破けて細菌感染している場合には、それに対応する軟膏。かゆみがひどい時には抗ヒスタミン剤または抗ヒスタミン剤が配合された塗り薬や飲み薬で対応となります。 発熱に対しては体力の無い乳幼児の場合には、脱水にならないように水分補給を積極的に行ってもらうことが重要です。

 

手足口病の検査

 

手足口病を特定する手段は、いつからどんな症状があったかなどの問診内容や医師の観察によるものです。通常行うことはありませんが、ウイルスの詳細を調べる際や数回にわたって感染を起こしているなどの特別なケースでは血液検査も行います。

 

手足口病の保険診療

 

手足口病の問診から治療薬までほとんどが保険診療となりますので、お子さんはもとより大人の方でも健康保険証をお持ちいただけましたら3割負担となります。

 

手足口病の治療費用

 

手足口病の治療では特別な検査や治療などはなく治療費用としても大きな心配はないかと思います。

新宿内にも多くの耳鼻科や耳鼻咽喉科がありますが、当院では受診された患者様一人一人のニーズに伴った診療を行っていくことと、治療費の負担をより軽くする方針で推進しております。

手足口病の兆候及び喉や耳などの不調を感じた場合にはお気軽にお越しくださいますよう、スタッフ一同心よりお待ち申し上げております。

 

手足口病の歴史

 

手足口病は最近になって現れた病気のように感じますが、1950年代後半には認識されていたウイルス性の病気です。日本では2000年以降になって発症し、その後急激に増加していきました。

日本では重篤にならず治癒に向かうことがほとんどですが、台湾では1998年に急性脳炎・脳症に合併し78名、カンボジアでは2010年には52名の小児が死亡した例があります。

手足口病に対しては治癒が当然のように思われていましたが、こういった症例から病状の進行に細心を払う傾向が強くなってきました。